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レオンと呼ばれたその青年は頭をコツンと自分で軽く叩いて笑った。ナポレオンは勿論、国王とその従者たちも呆れた顔で青年を見つめた。茫然としながらも国王がこの青年は誰かと尋ねるので、ナポレオンは答えた。
「彼は画家、レオナルド・ダ・ヴィンチですよ」
「れ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、だと!?本物なのか!?」
「え、ええ…」
何をそんなに驚くことがあるのかと言いたげなナポレオンにルイはすぐさま答える。
「『絵画の魔術師』レオナルド・ダ・ヴィンチは魔法の筆を持ち、高度な魔術を使うというではないか。しかも、描く絵は大変美麗で、依頼が殺到するものの、それを一切受けず、住んでいる夢幻の森からはほとんど出ないと聞いたぞ」
ナポレオンからしたら、叔父が言ったことに驚きだ。「いや、この人しょっちゅう俺の部屋に来てますけど」とは言えず、誤魔化すように笑った。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、二十一歳。『絵画の魔術師』という異名を持つ、天才画家である。彼の持つ魔法の筆は描いたものを実体化できる。ビストリア帝国の端にある夢幻の森に住んでおり、彼の姿を見た者はほとんどいないという。ただ、男性であるということしか知らないという人が大半なのだから、ルイ十四世の反応に無理もない。
そして噂通り、世間知らずで引きこもりのレオンなので、ルイを見て、一言言った。
「おじさん、誰?」
国王陛下とその従者は唖然とし、ナポレオンは慌ててレオンの頭を掴んでぐっと下げ、自分も頭を下げて謝罪した。
「ば、馬鹿、レオン!ルイ十四世国王陛下だ!申し訳ございません陛下!ほら頭下げろ!」
すると、突然ルイは声をあげて笑った。
「ふっはっはっはっ!よい、気にするな。世間知らずなところは噂通りだな、ダ・ヴィンチよ」
「あー、陛下。依頼する気なら受けないよ」
「な!?陛下の御前でそのような言葉遣いとは無礼であるぞ!!」
レオンの発言に従者が慌てて注意するが、陛下がすぐに止める。
「よい、気にしていない。依頼する気はないぞ」
「そう、それならよかった。じゃあ、なっくん、行こうか」
「あ、ああ」
レオンすげぇ、と思いながら、ナポレオンは陛下に一礼した。
「では、陛下。行って参ります」
「ああ、気を付けて行くのだぞ」
ルイ十四世は少し悲しげな目でナポレオンの背中を見送った。それに気付いた従者の一人が彼に尋ねた。
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