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ついていけない事態に直面したとき、人は思考停止するんだと思う。
そう、まさに今みたいな。
私、水谷朱莉、十六歳。
ごくごく普通の高校生活を送っていた。はずだった。
友達とくだらないことでいちいち笑い合ったり、しょうもない授業で居眠りしちゃったり。ある日、素敵な恋に落ちたり。
そんな日常が待ってるって、信じてた。
――でも。
その日は、朝から先生たちがいつになく余裕がなかったと後になって思い出した。
朝礼のとき、お昼休みに校内放送があるって知らされた。
誰も内容なんてわからなくて、緊急だとか重大だとか考えることもなく、特に興味もないまま午前の授業はいつも通り行われた。
十二時二十八分。
全校生徒は、各自席について待機することになっていた。
「先生ー、お弁当食べていいですかー」
「お腹すいたー」
これから何が伝えられるのかさっぱりわからない私たち生徒は、身動きの取れない状況に不満の声を交わした。
でも、先生は緊張した様子のまま何も言わず、天井から吊り下げられたテレビの電源を入れた。
(何だろう? 何か見せてくれるのかな?)
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