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がやがやした空気が少し静まった。
平日のお昼にテレビを見るなんて、夏休みか冬休みくらいだなぁ。あと、春休みも、か。
チャンネルは賑やかなバラエティ番組ではなく、お堅いニュース番組だった。真面目そうなアナウンサーがニュースを淡々と読み上げている。あんまり面白くない。
十二時三十分。
ぱっと画面が切り切り替わった。
かっちりしたスーツ姿のオジサンが壇上にいる。背景は重そうな青いドレープ。多分これは……総理大臣、だよね?
オジサンは、緊張した様子で口を開いた。
「えー、国民の皆さん。本日は、重大な事実をお伝えしなければなりません。どうか冷静に受け止めてください。」
そんな勿体ぶった前置きで告げられたのは――世界が終わるという嘘みたいな話だった。
日本国民への通達は、テレビを通じてその日その時間に一斉に行われたそうだ。
後でお母さんに聞いたところによると、どのチャンネルも総理大臣の会見の生中継だったらしい。
地球のコアの活動がどうとか、火山活動と地震がどうとか、何か説明していた気がするけど内容は頭に入ってこなかった。
私も、クラスのみんなも、すんなり信じられるはずがなかった。高校生一斉ドッキリみたいな大がかりなテレビ番組の企画なんじゃないかって言い出す子がいた。これから何かの冗談だって種明かしされる方が納得できると思った。
でも。
そうじゃない、らしい。
本当に世界が終わる、らしい。
(そんな、まさか……ね?)
いきなり地球滅亡とか伝えられても、冷静に受け止められるはずがない。
それは誰だってそのはず、でも、先生は本当に深刻な顔で今にも倒れそうに青ざめていた。
教室中を満たしていたさざ波のような動揺はいつの間にか姿を消し、私たちはその状況を受け止めざるを得なかった。
(本当……なの?)
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