7割は宙からくる

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*  入館者がさほど多くないためか、歴史民俗鉄道資料館は施錠されていることが多い。大口ふれあいセンターの職員に声をかけると鍵を開けて照明を付けてくれる。エレベーターを降りると鉄道に関する機材や沿線の街の風景写真が最初に目に入る。奥に進めば金山鉱業の歴史と、古民具の展示などが続く。  マサたちは隕石の展示を見逃すまいと慎重に歩を進めた。すると思いのほか早くパネルを見つけることができた。慎重に見ていなければ全く見過ごすところだ。  明治19年(1886年)10月、伊佐市上空で隕石が爆発。その破片が伊佐市内の数ヵ所に飛散して落下した。だが当時はすぐに調査は行われず、昭和に入ってから落下地点と隕石の調査が行われた。この調査から、南からやってきた隕石が北に向かって飛散したことが分かり5つの隕石が回収された。大英博物館や国立科学館の他、1つは鹿児島県立博物館に保管され、これらの隕石は「薩摩隕石」、国際名称で「九州隕石」と称されている、と記されていた。  「隕石は5つだね」ドンが言った。「落ちた場所は、大島、小水流、金波田、平出水の千里原、重留南」リコはメモを取っている。「僕たちが見たのは7つだ。この隕石のことじゃないのかな」マサはもう一度展示の内容を読み返してから、残念そうに言った。「仙人に報告してから、この落ちた場所を訪ねてみましょう」とリコの言葉からは残念さは感じられない。 「何か分かるかもしれないでしょ。諦めちゃだめよ。それに…」 そこまで言ってリコは自分の言葉にハッと息を呑んだ。マサとドンが同時にリコを振り返る。「そうよ。あの絵だわ。ドンちゃんの!」リコは2人の手を掴んで資料館を飛び出した。
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