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「ただネ、あーた達、これは知っとるかいね、平出水にはカミナリ石ってのがあってネ、触ると雷が鳴って天気が悪くなるから触ったらイカーンっちゅて」
3人は顔を見合わせた。隕石が落ちたとき大砲のような轟音が響いたとする記述を調べたことがあったのだ。3人は老女にそのカミナリ石の場所まで連れて行ってもらった。
何の案内板もなく、何の特別な感じもなく、縁側の下で靴を脱ぐための石としか思えない、平たく横長の黒々した大きな石が雑草の中に横たわっていた。老女は3人を案内するとまた散歩に戻っていった。
「本当にカミナリ石なのかも怪しいけど」ドンは笑いながら言った。
「触ってみたら本物かどうかわかるよ」マサがドンを小突く。
「触るなんてそんな遠慮しないで、寝っ転がっちゃうぐらいガバッといきましょうよ」リコも悪乗りをして3人で押し合いへし合いしていると、つかみ合っているマサとドンがリコに強く当たってしまった。
リコがカミナリ石に倒れ込んだのは本当に一瞬の出来事だった。背中から落ちると思ったリコはとっさに体を反転させ、カミナリ石にうつ伏せに倒れ込んでいた。マサとドンは声も出せず時間が止まったように体を固めてカミナリ石の上のリコに視線を送っていた。リコの右腕はカミナリ石の端から力なく下に落ちており、体はピクリともしない。
「ちょ…リコ…?」
恐ろしくなったマサがリコの背中に触れようとしたとき、リコの体がギクリと動いた。肩で息をしながらゆっくりと体を起こす。リコはマサとドンを振り向きざまに見上げながら厳しい顔で言った。
「見つけた。隕石。」
カミナリ石の横から引き揚げた右手には、小さなつるりとした石が握られていた。
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