7割は宙からくる

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父親が持っていたパネルを投げ捨て、マサの胸ぐらを掴もうとした瞬間、大きな音と共に父親はマサの視界から突然消えた。見ると仙人が父親に体当たりをして突き飛ばし、彼の身体に覆いかぶさっているところだった。マサの父親は床に頭を打ち付けて脳震盪を起こしたのか、低い声で唸りながら体をねじっている。 「ここはわしに任せろ。隕石を持って行け!早く、時間がない!」 仙人の声に目が覚めたマサは、ジュラルミンケースごと隕石を持ち出し、曽木の滝に走った。 *  待ち合わせ場所にいたドンとリコと合流して、3人は押川強兵衛の力石のところに立った。川のすぐほとりにある力石は他に似たような石がゴロゴロと転がっていてそれと見分けることが難しい。水の音に負けず、上流のほうでは大型重機がエンジンをふかす音が聞こえている。その他にも大勢の怒号が飛び交い、パトカーと救急車のサイレンがけたたましく、上空をヘリコプターが何機も旋回し、野次馬が山のように押し寄せているという状態で曽木の滝の周辺は騒然としていた。  もう間もなく日が暮れるという時間帯だった。3人はそれぞれに隕石を1つずつ持って力石の前に立った。そして「1、2の3」のリコの合図で同時に力石の上に飛び乗った。  次の瞬間、全てのものを白く呑み込むような強烈な光が3人の隕石から溢れ出し、伊佐市全体を包み込んだ。圧倒的な眩しさと速さは、宇宙の始まりを思わせる爆発的なものであった。
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