7割は宙からくる

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*  綺羅綺羅橋は未来館がある県道53号線と農免道路の「こがねロード」の交差点を南永小学校側に折れた途中にある榎木田川に架かる橋の名だ。特に何か目立つものでも目印があるわけでもなく、大きくも小さくもない橋だが、3人はリコのおばあさんが南永に住んでいたことと、この橋の名前がガラにもなく可愛いこともあって場所は良く知っていた。  夏休みに突入する儀式を終えた3人は、日陰のない橋の上に立っていた。マサもドンも頭から水をかぶったように汗びっしょりだ。野球帽をかぶったリコも顔を真っ赤に火照らせているが、涼やかな眼差しで欄干から橋の下を見下ろしていた。マサとドンはリコの言葉を待った。  「おばあちゃんが3人でここに行きなさいって言ったのよ」 リコは視線を変えないまま言った。 「しかもヒミツに」 マサとドンは顔を見合わせてさらに続きを待ったが、リコがしゃべり出さないのでドンが口を開いた。 「おばあちゃん、綺羅綺羅橋に何があるって?」 リコは振り向いて目をキラリと輝かせて悪戯っぽく笑って答えた。 「ごめん、正しくはこの橋の下の橋」  3人は慎重に橋の下にある旧道に下りて行った。旧道はもう使われていないので藪に覆われている。耳障りな羽音を立てながら目の中に飛び込もうとする虫をよけて足元のヘビに注意しながら歩みを進めていると、あった。綺羅綺羅橋のちょうど真下に当たる場所に小さな石橋が。  苔むした石橋は子どもがくぐれるほどの小さなアーチを1つ作っていて、橋の片側は土手に飲み込まれかけているものの、全体的に肉厚な作りで重厚感と安定感がある。この橋は柴江橋といって、昭和4年に完成した古い橋で、綺羅綺羅橋が架かるまで多くの人の往来を助けていた。  「すっご。こんなトコにこんな橋があったんだ。なんかカッコいいね」 マサが感嘆の声を上げている間に、リコはアーチの下に潜って行く。それに気づいたドンもリコの後に続く。小川の水で靴はグショグショだがこの暑さでは心地よい。アーチにはリコぐらいしか潜るスペースがなかったので、マサとドンは覗き込むようにアーチの中のリコに「どうしたの?」と声をかけた。  「ここにペンダントを隠してるって、おばあちゃんが。」 エッ!と言った自分の声が異様に甲高い声だったことに驚いてドンが咳払いをする。
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