7割は宙からくる

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「その木は伊佐ヒノキじゃ。だから他所から運ばれたものではないことが分かる。どこか研究所に送れば詳しい時代が分かるがの。絵が消えた理由は今のところこのワシにも分からんわい。」 ドンの悔しがり方を尻目に、仙人はずいぶんと楽しそうだ。 「考えてみるから、しばらくこの絵をワシに貸してくれんかの?」 3人は絵を残して仙人の家をあとにした。雨は弱くなっていたが風が強くなっていた。風に乗って台風の匂いがしていた。 *  出校日は、夏休みの宿題の進捗状況をお互いに探り合ったり日焼けの具合を競い合ったりする日だ。だが今年の出校日はザワついていた。来年度から転校することにしたという家庭が急増したのだ。理由はメタルレア社だった。ついに土地を売って伊佐を離れる決心を固めたという。それまで子どもたちにとってメタルレア社は遠い存在であった。しかしクラスメイトと離れ離れになるカウントダウンが始まると、これは他人事ではなくなってくる。おりしも霧島連山の硫黄山の噴火で、伊佐市内を流れる川内川の水質の変化によりコメの栽培が継続できるのか心配されるニュースが駆け抜けたときでもあった。これを機にメタルレア社に土地を買ってもらって、新天地で出直そうとする農家が一気に増えたのだった。  リコの家でも同様にこの件が話された。父親と机を挟んで2人きり。リコは黙って父の話を聞いた。父は包み隠さずメタルレア社から提示された条件をリコに話した。すでに南永の祖母の土地は売却の仮契約を済ませていたし、来年度でここを引っ越して名古屋に行くつもりだと聞かされた。リコは分かったとも嫌だとも言わなかった。
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