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お面の子
町内で開催されたいた縁日のイベント。
子供達にはお面が配られ、みんな楽しそうに渡されたそれをかぶっていた。
ささやかな縁日の模擬店に群がり、みんなとっても楽しそう。…でもあの、鬼のお面をつけてる子は誰だろう。
都市型過疎化で、町内にいる子供の数は僅か十数人。全員名前もどこの子も把握しているけれど、さすがにお面をかぶってしまうと正確には見分けられない。
でも、背格好で何となく判別できる子供達の中、一人、どう見てもこの辺りにはいない子が混ざっている。
誰かの友達で、よその町内から遊びに来てるのかな、だったら問題ないけれど、周りもみんな気にしてるようで、あの子は誰だろうとひそひそ声が溢れている。
その中に一つ、思ってもいなかった情報が混ざった。
「誰か、鬼のお面なんて用意した?」
そういえば、用意したお面は最近はやりのキャラクターものばかりで、その中で、鬼のお面は一際目立って浮いて見える。
誰がつけているのかそもそもどうしてここにあるのかも判らない鬼のお面。それをつけた子だけなんだか周りより影が薄く、時々足元の影などは完全になくなっているお面の子。
あの子はどこの誰だろう。いいやそもそもこの世のものなのだろうか。
周りに子供達がいるし、今はみんな楽しそうだからあえて放置しておくけれど、本当は誰しも気が気じゃない。
見覚えのない、人間かどうかも判らないお面の子。
追っ払ったりしないから、どうか縁日が終わったら、そっとこの場からいなくなってくれますように。
お面の子…完
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