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「始めまして。文芸部の面接に来ました。山本峻輔、十五歳。新入生です」
峻輔は原口の姿に気づいた。鋭い目つきの男の前に、部長と書かれた三角錐が置いてある。……勢いで入ってきたけど、この人が部長なのか。峻輔は恐怖で声が出てこなかった。
原口は苦々しげに吐き捨てた。
「ち、なんだ男かよ。男になんて興味ねぇ~んだよ。とっとと帰ぇりな」
「……男子は入部できないんですか?」
「できねぇよ。俺は女の子にしか興味がねぇんだ」
峻輔は原口の態度に怯みながらも、教室の奥で本を選ぶ女生徒の姿を見逃さなかった。……待て待て、女子部員はいるんだ。ここはポジティブに行こうじゃないか。
「俺、文章を書くことに興味があるんです。もし良かったら入部テストをしてもらえませんか」
「あぁ~ん、テストだぁ?」
……ひぃ、いちいち高圧的な人だなぁ。口には出さず、峻輔は原口に愛想笑いをして見せる。
「……そうだな。うちは文芸部だ。お前が五分以内に気の利いたラブレターを書けたら、入部をさせてやってもいいぜ」
原口は本来、気分屋なのだろう。傍らにあった紙と鉛筆を机の上に叩きつけた。
「よぉ~い、スタート」
「えっ、あっ……、はい」
峻輔は原口に急かされ、貸出し机の前にしゃがみ込むと、必死になって紙と向き合った。
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