大入高校文芸部

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 暇を持て余した原口は、欠伸をしながら、窓の外の中庭を眺めた。そこにはこれから、オーディションを受けようとする、吹奏楽部の新入生が並んでいた。原口は女生徒の群れに笑顔を見せると立ち上がった。 「はい駄目ぇ!」 「え~~~っ? まだ一分も立っていないじゃないですか?」 「あん。行動がトロイ奴は嫌いなんだよ」 「え、でも」 「一年坊がやけにからむな。そんなに入部したいならメールで送って来いよ」  原口は机の下からノートを取り出すと、峻輔の胸に投げつけた。 「じゃぁな。へへへ……」  原口は悠然と部屋を出て行く。 「えっ、どういこと……」  峻輔は文芸部ノートと書かれた学習帳を開いてみた。一ページ目の裏側に、『部長』と書かれたメールアドレスが載っている。遠くで陰口をたたく女生徒の声が聞こえてきた。 「本当に文芸部に入るのかしら」 「奇特ね」  峻輔はその声を聞きながら、……大丈夫、これは試練なんだ、必ず乗り越えることはできるはずさ、と自身に言い聞かせた。それから制服の上着のポケットからスマホを取り出すと、画面にメールアドレスを打ち込み始めた。  峻輔は図書室の女子部員たちに一礼すると部屋を出た。そのまま二階の渡り廊下まで歩いてきた。そこで同級生の玉野智久が、スマホを覗きながら野球ゲームをしていた。峻輔と智久は中学時代からの親友だった。智久は少しだけ顔をあげると峻輔に話しかけた。 「どおだった?」     
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