相手は全社の人気者

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帰社途中で見かけたスイーツのお店、一応食べログで検索したら星3つ。いけるかな。 でも、ケーキは嫌なんだよな。 アイスかな。バニラとかミルク系だよな。 お誕生日祝いだと嫌がる感じがしていたな。 今日のお礼だと言えば受け取ってくれそう。 ……僕のものになる訳でもないのに必死だな。 「ただいま戻りました、て、何ですか」 総務部にケーキ箱が5つ重ねてあるな。お花も綺麗。 「綺田さんが受け取り拒否して、総務にまわされたけど、木津くん、食べる?」 うんざりした顔で言っちゃダメ。 「僕も甘いものは正直、」 「営業部に3つ、どうぞ」 「……ありがとうございます」 誰か食べるかな。その前に商品部へ行きたいのに、これを荷下ろししないと。 「木津くん、ケーキ箱重ねて担いだら前が見えないから危ないぞ」 「そうですね、じゃあ後で取りに来ます」来ないけど。 「失礼します、営業部の木津です」 「お帰りなさい。木津くん、どうだったかな。上手く商談が出来たかな」 あれ? 返事をしなかっかな。 「お陰様で」 「うん、良かった」 和むなあ。可愛い、見上げてくれるのは疲労回復効果があります。 「あの、お礼にこれを」 「ん? 俺に? 嬉しいな。バニラかな。俺の好きなもの知ってるの? なんでかな」 あなたいい加減にして下さいね。みるものすべて落としていませんか。 「会社の冷凍庫を借りよう、ありがとう」 あ、受け取ってくれた。 「あと、いいですか。お誕生日ですよね。おめでとうございます」 「何で知ってるのかな」 この人は! 「不思議だな。結構お祝いされて来たけど、沁みるときがあるんだね。言葉かな。気持ちかな。よく分からないけど、きみから言われると嬉しいな。今まで生きてた意味ってこれを聞くためだったかな」 「え?」 「生まれてくるのって意味があると思うけど。自分では分からないよね。探すのが人生なのかな。だって迷うし、正しい道とも限らないよね」 「正解があるのか、計算しないとまずいのかさえ分からないな。でも、誰かから気持ちのこめられた言葉を貰えたら、生きてる意味って見いだせた気がする。嬉しいからさ。それが生きてく答えかな」
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