相手は全社の人気者

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商品部を尋ねたら綺田さんと目が合った。 「どうしたの」 用事で来るに決まってます。あまり見ないで、ときめきます。 「ああ、やり方分からないんだ。じゃあ俺が教えていい?」 控えめなのか強引か。とにかく相手の懐に入るのが上手すぎる。 「木津くん。聞いてる?」 「あ、はい」 「俺でいいかな?」 何が?! 「俺じゃないほうがいい? 誰か呼ぼうか。教えたいけど駄目かな?」 あなたがいいに決まってます。 「教えて下さい!」 「うん、じゃあ。この指図書だけどさ。下書きしたほうがいいよ。訂正するとき面倒だから」 「あ、はい」 「メーカーにサイズとか最低限知らせないと、連絡入って、二度手間になるからさ」 データ送信じゃないんだな。 「うちの会社は工場にも発注してるから、そこにパソコンがない場合が多いんだよね」 は、今、声に出したかな? 「面倒でごめんね。悪いけど、書き直してくれるかな。その時、再度寸法だけ確認してね」 「はい、何時までに再提出したら納期に間に合います?」 「そうだね。工場の受付は午前中だから今日は無理かな、明日の確認になるんだけど」 あ、どうしようかな。 「いいよ。俺、お昼の当番で商品部に居るから持参して。納期確認まで出来るから」 「え、いいんですか?」 「うん。電話当番だから用事があるほうが助かるし」 前向き過ぎるし。 デスクで何か書いてるけど字まで美しいとは恐れ入ります。
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