車の後ろにいた男

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 僕よりも、彼女の方が優しかったように思う。  彼女は僕が行かないと怖い目に遭えると思っている。だから、僕は行くようにしていた。それなのに、彼女も『怖い思いをしたいから来るな』とは一度も言わなかった。 「ねえねえ、氷室くん。こんな話、聞いたんだけど、行かない?」 と、とても明るく言ってきた。 「行くよ」 と言うと、嬉しそうな顔をした。その笑顔は無邪気で可愛らしかった。  でも、一度だけ断ったことがあった。  その時の彼女の顔を、今でも思い出す。  それが、僕が見た彼女の最後の姿だった。
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