友人からの便り

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友人からの便り

 仕事から帰り、マンションのポストから自分に届いた郵便物を手にする。  少しの遠回りが億劫で、数日分がたまっていた。  チラシも多く、まとめて軽く握りつぶすように持つ。落ちないように持つのに、最も効率的だと思った。  そのままエレベーターに向かおうとすると、チラシの間から行く手を(はば)むかのようにハガキが床の上に落ちる。  何気なくそれを見つめた。  濃い青。  長方形の藍色が、クリーム色の床の上にあった。  まるで、そこにぽっかりと穴が開いたようだった。  荷物をまとめて右手を空け、その青を拾う。  よく見ると青一色ではなく、白い線で風景が描かれていた。  そのタッチには見覚えがあった。
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