友人からの便り

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 無駄がない、計算された線。  サッと引かれたように見えて、物の形をしっかりと捉えている。  青と白だけで連なる山々と遠くに広がる海が描かれていて、とても美しいのだが、まるで深い深い闇に包まれた深夜のような景色。  空に星はなく、細い月があった。今にも雲に隠されそうなのに、銀糸のような月はその存在を示していた。  光と縁を切ったようなイラスト。  音のない暗闇に飲み込まれそうだ。  息を飲むほど美しくて。  その風景の前に立っているような錯覚。  こんなイラストを描ける人物を、ひとりだけ知っていた。
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