車の後ろにいた男

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「氷室くんってさ、ホントは怖いの嫌いなのに、いつも付き合ってくれるよね」  廃墟病院に向かっていると、彼女が言ってきた。 「まあ……」  意外なことを言われて、どう返したらいいのかわからなかった。 「氷室くんって、優しいよね」  彼女の澄んだ声が耳に届いた。  少し、罪悪感を持った。  僕は優しいから彼女の怪談ツアーのドライバーをしていたわけではなかった。  一緒にいて、楽しかったからだ。彼女と出かけるのは、理由はともかく悪くなかった。彼女には、一緒にいたいと思わせる何かがあった。 「優しい人って、霊にも頼られるんだって」 「は?」  ちょうど赤信号になったので、停まって彼女を見た。 「氷室くんの周りは、きっとちょっとした心霊スポットだね」 と、満面の笑みで彼女は言った。 「あ、信号、青、青」  彼女は前を見て指をさし、信号が変わったことを教えてくれた。
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