2人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「氷室くんってさ、ホントは怖いの嫌いなのに、いつも付き合ってくれるよね」
廃墟病院に向かっていると、彼女が言ってきた。
「まあ……」
意外なことを言われて、どう返したらいいのかわからなかった。
「氷室くんって、優しいよね」
彼女の澄んだ声が耳に届いた。
少し、罪悪感を持った。
僕は優しいから彼女の怪談ツアーのドライバーをしていたわけではなかった。
一緒にいて、楽しかったからだ。彼女と出かけるのは、理由はともかく悪くなかった。彼女には、一緒にいたいと思わせる何かがあった。
「優しい人って、霊にも頼られるんだって」
「は?」
ちょうど赤信号になったので、停まって彼女を見た。
「氷室くんの周りは、きっとちょっとした心霊スポットだね」
と、満面の笑みで彼女は言った。
「あ、信号、青、青」
彼女は前を見て指をさし、信号が変わったことを教えてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!