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怪談に興味を持っていた彼女
僕は好まなかったけれど、彼女が関心を持っていたことがある。
彼女の話はいつも楽しくて、彼女と話すのを楽しみにしていたが、これだけは無理だった。
人が嫌がることを好んで行うタイプではなかったように思う。ただ、自分が興味を持っていることだと、それでもグイグイくる。
「うちの母校に、二宮金次郎像が動くっていう怪談があったらしいのよ」
それを聞いて、眉をしかめた。
「……それが何か?」
聞いてはいけないと思い、目をそらす。
「身近に怪談話はないかと思って、ネットで探したの」
そう言って、彼女はスマホの画面を、わざわざそらした目の前に出してきた。黒い画面に赤い血のような文字。
「どうして探したんだ?」
それを読まないように彼女の指を見た。思っていた以上に綺麗な指で、また目をそらす。
「行ってみたいからだよ」
彼女の口から悪魔のような言葉が出てきた。表情は邪気のない笑顔。それを恨めしい気持ちで見つめた。
「どしたの?」
僕の顔を見て、彼女は不思議そうに見返してきた。
「怪談だけは勘弁」
そう言って、目をそらした。
「氷室くん、怖い話、ダメなの?」
と、驚いたように言った。
それまでそんなことはなかった。
彼女が話すことは、だいたい面白いと思えた。
でも、怪談だけはダメだった。
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