オツェアーノから先

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オツェアーノから先

 来た道とは別の小道に入ると、すぐ脇には小川が流れていた。吸い込まれそうな澄んだ水の流れに、ふと時の流れを重ねてしまう。時は流れ去っていくのに、記憶や想いはいつだって同じ場所で淀んでいる。それでも、軽やかな水流は、晩夏の暑さを吹き消してくれるような心地よい音を運んでくる。そんな矛盾に心がキュッと痛くなる。 「カッパいるかな?」  希海(のぞみ)は、その短めの黒髪を風になびかせて、いたずらっ子のような表情を浮かべ、そう言った。 「そんなの、いるわけないじゃん」  あの頃と同じトーンの会話。それがずっと続くのだと思っていた。 「キュウリ持ってくればよかった」 「希海って、なんだか、そういうところ、子供だよな」 「そんなところが好きなんでしょ?」 「まあ、そうだけど」 「ヘンタイ」 「おいっ」     
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