文化祭です

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「でも良いんです さっき乾先輩からメールきたんですけど」 「雅也が……」  何かを察し慌てて、顔を上げると、スマホの画面をまじまじと見ている彼女。そして次の瞬間、彼の前にスマホを見せる。 「乾先輩が 良く撮れたからって送ってくれました 二人のツーショット!!」 「消去!」  いきなり立ち上がり、七海の携帯を採らんとする環。 「駄目です! 私のスマホの待ち受けにするんですから」 「却下!!」  尚も、彼は彼女の携帯を奪いに詰め寄る。七海も必死に抵抗し、体を反らし、環から遠避けようとするも、身長差には叶わず、彼女に被さるように、難なく七海のスマホを握る手を掴んだ。 「からかうな」 「ごねんなさい 先輩」  七海の頭上で少しあきれ顔を浮かべる環に対し、七海は楽しげに笑う。そんな彼女をそっと片手で抱き寄せる。いきなりの事で、声がでない七海。そんな中、彼は優しく語る。 「充電」 「充電…… ですか?」 「そう 充電」  穏やかな口調に同調するかのように、伸ばしていた手が力なき者となり、ゆっくりと環によってたぐり寄せかと思うと、彼の腕に包み込まれていた。 「環先輩」 「七海」  不意に名前を言われ、慣れていないと言うこともあるが、それ以上に脳天を突き上げるような痺れに、思わず身を縮めてしまう。そんな七海に合わせるかのように、環はゆっくりとしゃがむ。そして、再度彼女を抱きしめる。 「逢いたかった」  甘く囁かれた声とは裏腹に、強く抱きしめられる。そんな中、再度彼が七海の耳元で呟く。 「凄く…… 逢いたかった」 「環 先輩」  そう言う七海はゆっくりと彼の首に手を回す。 「私もです」  環の首元からゆるりと手をほどくと同時に、互いの額をコツリと付けると、共に、どちらからともなく、ゆっくと唇を合わせた。何度も…… そして優しく……  そんな二人を、後夜祭の取りを務める花火の光が照らす。とても暖かく、二人を包むように。
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