デザインカプチーノに心を映して

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 エスペランサで食事をしたことがない杏さんは、予想通りなかなか決まらずメニューの上を視線がなんども行ったり来たりしている。注文を先に済ませた渚さんは、僕の方を見てからかうように口元を緩ませた。  「ねえ、マスター。杏さん、いつもと違うでしょう?」    もちろん入ってきた瞬間に気が付いていた。杏さんはいつものオーバーオールじゃない。明るい色のワンピースに小さなイヤリングもつけている。  「そうですね。素敵な……」  「ちょっと待った! ステキな洋服ですね、なんて言ったら、落第よ!」  まさにその通りに言おうとしていたところを鋭く遮られる。でも落第って何からだ……?  「ちょ、ちょっと渚さん……」  杏さんが頬を赤く染めて渚さんの袖を引っ張る。あれ? 杏さんの頬。もとからほんのり赤かったような……? 思わず杏さんの顔に視線がとまる。一、二、三秒……、杏さんの耳たぶまで熱が浮かんでくる。  「あの、ええと。おきれいです……」  洋服をほめていたら確かに失格だった。杏さんに恋する男として。杏さんは薄化粧していた。髪もいつもの髪型ではなく、両脇からゆるく編み込み後ろでまとめられている。三つ編みの下からはゆるくウェーブがかかった髪が肩に落ちている。いつもの杏さんが向日葵なら、今日の杏さんはかすみ草だ。  渚さんは声には出さないが「よしっ」と言うように、僕の答えにうなずいた。かろうじて合格できたようだ。     
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