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「菜花とベーコンのクリームスープスパゲティ、お願いします」
杏さんが下を向いたまま言った。
「はい、承知しました」
鍋に入っているスープベースをフライパンに取り分けて火にかけ、同時に渚さんのペペロンチーノに入れる野菜を手早く刻む。フライパンを出してオリーブオイルをたらす。
細めのスパゲティはあっという間に茹であがってしまうから、その間に具材を仕上げておかなければならない。
「マスター。あのね、ケンちゃんなんだけど」
ケンちゃんと言えば、先日エスペランサで渚さんにプロポーズをした芸人志望の男性だ。
「ケンちゃん、さんが何か?」
「うん。あのね、結婚することになったんだけど」
それは知っていますよ、渚さん。と思いながら、ベーコンをフライパンに投入する。ジュッといい音がして、すぐに香ばしい香りが立ちのぼる。
「結婚パーティーをしようと思って」
「いいですね」
「ここで」
「あっ、ここで……? ええと。」結婚パーティーの会場になるのは初めてのことだ。必要な確認事項に頭を巡らせる。「貸し切りになりますね。何人くらいいらっしゃいますか?」
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