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カフェになじまない人
腰の高さほどの木製の看板を抱えて店から外へ出た。見上げれば、ぐるりと周りを取り囲むビルの形に切り取られている多角形の空が見える。雲もなくよく晴れていた。もうすぐ朝八時、カフェ・エスペランサの開店時刻だ。
クリーニングから戻ってきたばかりのまっ白い長袖のシャツに、やわらかな陽射しが反射している。半月ほど前までは、この時刻でもシャツ越しに熱がしみ込んでくるのを感じたものだが、十月に入ってからは太陽もだいぶ朝寝坊になったみたいだ。
カラーガラスがはめ込まれた緑色の扉の横に、看板をそっとおろす。店名のアルファベットのひとつひとつが、フルーツやつる草、コーヒーカップやスイーツでデザインされている自慢の看板だ。一歩下がって、まっすぐに置けたかどうか建物を見上げて看板と見比べて確認する。
(よしっと。……それにしても自分の店ながら、いいカフェだ)
腰をそって伸ばすふりをしつつ、一人満足して頷いた。
赤い屋根に白い壁。壁に斜めに入れてある梁は本物の木だ。緑色の窓枠が少しカントリー風と言えなくもない。
外の収納からブラウンのパラソルとテーブルを出し、広い歩道に置く。
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