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雄大はうっすらとアルカイックスマイルを浮かべて大地を見守っている。
「もしかして、セッティングしてくれたのか?」
気の利く雄大のことだ。喫茶店とかで二人で会う手筈を整えてくれたりしたのかもしれない。
雄大は変わらずアルカイックスマイルを浮かべている。
「大口図書館にいる」
「え?」
「かも」
「え?」
「以上!」
「終わり?」
「なんや。文句あんのか」
「いや。会う約束してくれたんかと」
「甘えんな!」
丸めたノートでぽこんと叩かれる。
「相手は氷の女王やっぞ!?そんな簡単に約束とれるわけないやろ!」
「じゃあ、自分で大口図書館に会いに行くしか……?」
「当然」
大地は肩を落とした。
「高原まどかに会うために、用もない図書館をウロウロするなんて、かっこ悪すぎるやろ」
「おまえ、そういうとこやっぞ」
雄大が大地の肩に腕を回した。
「自分からは何もしようとせん。原付のことも、自分でどうにかしようとはせん。おまえが俺のことどう思うちょるか知らんが、俺は自分の欲しいものは自分で手に入れる」
いつもとは違う、まじめな声だった。
「わかっとるわ」
雄大の手を軽く払って、作り笑いをした。
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