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燃える怒り
大口ふれあいセンターの二階には、大口図書館がある。
大地にとっては図書館と言えばふるさといきがいセンターにある菱刈図書館だが、大口図書館は菱刈図書館よりも大きいようだ。いずれにしても、大地は図書館とは無縁の人生を送ってきた
大地は本を探すふりをしながら、右を見て左を見て、高原まどかを探した。棚の間から首を伸ばしたりひっこめたり、どう見ても不審者だ。
(本当にいた……!)
まっすぐに背筋を伸ばしたまどかが、大テーブルのひとつに腰かけて本を読んでいた。
前に会った時と同じ赤いスカートが椅子から垂れている。
大地は行ったり戻ったりを繰り返してから、本棚から適当に本を取って高原まどかのはす向かいに腰かけた。
まどかは熱心に本を読みふけっていて、大地が座ったのにも気づかない。本を読むふりをして、大地はまどかの顔を盗み見た。
見れば見るほどに、清廉な美しさがある。真っ白でさらさらしていて、ひとつの曇りもなく、まっすぐだ。
ふと、高原まどかと目が合った。
黒い瞳に、光が映りこんでいる。初めて見たときと同じ、強い目だ。
「……何?」
まどかが眉をひそめて聞いた。
うっかり、見つめすぎてしまった。
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