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と返ってきた。ゲンにとって、現世の人間はすぐ死んでしまう儚い存在なのだそうだ。祥子が女性だから、という理由でなかったことにすこしがっかりした。ゲンにとって祥子はただの遊び友達でしかないのだろう。
「次は、シュークリームとプリンっていうのを持ってきてよ」
「そんなに食べてばっかりだと、太っちゃうよ」
「いいんだよ、オレは。隠世に住んでると、簡単に姿は変わらないんだ」
「なにそれ!ずるい!太らないなら、私だってたくさん食べるのに!」
「太ったっていいじゃないか。なにが問題なんだよ」
「問題しかないから!」
理解できない、という顔をするゲンに、祥子は苦笑した。ゲンは女心に疎い。というか、男性と女性は肉体的だけではなく精神的にも違うということをわかっていないのかもしれない。周りにいる女性と呼べる存在が、育ての親であるおせんだけだったのだから当然といえば当然だ。
車の窓から手を振って、今日も夕暮れ前に祥子は帰っていった。それを見送り、ゲンは登山道に引き返した。一歩進むごとに景色がかわり、森が深さを増す。隠世に帰ってきたのだ。
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