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昼休みの渡り廊下は、名樫(ながし)センパイのオンステージだ。
「名樫せんぱぁあああい!!」
初夏の明るい陽射しが差し込む廊下で、窓にもたれて白く泳ぐ雲をぼんやり見ていたあたしの耳に、そんな黄色い叫び声が届いた。
(うるっさいなぁ……)
視線を下ろすと、本校舎の一階(ちなみにあたしがいるのは本校舎の二階)と体育館をつなぐ渡り廊下に、すらりと背の高い男子がいる。
お日さまの光を受けて、無駄にきらきらしてるはちみつ色のふわふわヘアー。
青葉を映したような緑色の瞳。優しげな口元。
細身なのにがっしりしている背中に、ギターケースを背負ってる。
アレが、名樫センパイ。
この中学校で、いちばん人気でいちばんイケメンの『男子』だ。
「こんにちは、イシノさん、ウカワさん、エモトさん」
端正な顔に広がる、とびっきりの甘い笑顔。名前を呼ばれた女子たちは、きゃあ、と歓喜の悲鳴を上げる。
他の女子ーー一年生も二年生も三年生も、次から次へと名樫センパイの元に集まってくる。センパイは律儀にひとりずつ名前を呼んで挨拶する。
(すごいな、みんなの名前、覚えてるんだ)
と、感心しかけてすぐに思い直した。
そんなの当たり前だ。
だって名樫センパイは、
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