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いつまでフリーターなの?
ファミレスの店員として忙しく働く紗智。就職氷河期最後の方の世代で高校時代にメンタルを病んでしまって、普通高校から異例の就職をすることになった。しかし、就職コースがない学校でしかも持病のことがあるのでファミレスのアルバイトに落ち着くことになった。
採用面接では店長が優しい言葉をかけてくれた。
「僕もさ、一応進学校って言われてる男子校出身だけど色々あったから。うちの職場では学歴なんか全然役に立たないけど、色々あった人がいるから大丈夫。難しいかもしれないけど過去の栄光は忘れて、かといって卑屈にならずに一緒に頑張ろうよ」
アルバイト経験ゼロの紗智はとにかく仕事に慣れること優先で少しずつ自分のペースで頑張った。ミス連発して落ち込むこともあったけど、
「慣れだよ、慣れ」
「焦らない。焦ってもお客さんの数は減らないから、ゆっくり丁寧に」
優しい言葉と、
「洗いもの食洗機に仕掛けるのは両手!もう片方の手が遊んでるよ!」
「オーダー取ったら手ぶらで帰ってこない!下げ物ついでにして!」
叱咤激励の声が交互に掛けられる。
でも、熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちにお出しするという食べ物商売の気質のせいなのか、女性の先輩もみんな男っぽくてさっぱりした人ばかりだった。めちゃくちゃ言葉がキツいお局様もいるにはいたが、休憩が紗智と重なると気さくに話しかけてくれる優しさを持った人だった。
「ごめんね、ピーク中はつい気が立ってキツい言い方になって。でも、よく頑張ってるよね真面目で私語ひとつしないし。」
「いえ、こちらこそ慣れないとはいえご迷惑かけてすみません。覚えることが一杯でお喋りする余裕がないんです」
「まあ、若いしすぐ慣れるよ。そのうち暇があればお喋りするようになるから、私みたいに」
怒らせるとめちゃくちゃ怖いけどからっと笑う豪快なお局様で、男っぽくて紗智はすんなり馴染めた。女っぽい人だらけだったら三ヶ月で辞めてたと思う。
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