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「イテテ。上山さん作業速いね、どれどれ。しかも綺麗に並んでるし助かった。じゃあ次は2階のフロアで発送作業するから伝票の書き方教えるね。この段ボール台車に積んでエレベーター使うから手伝って」
部長は段ボールを台車に載せようとするのだが、よっこいせと力を入れてもかなり苦戦している。紗智は、
「あの失礼ですが、腰を後ろに引きすぎるとギックリ腰になります。私が台車に積みますからエレベーターで運んで頂けませんか?」
「え、女性に力仕事ばかりさせるのは気が引けるんだけど…。」
「私の前職は力仕事も普通にありましたからお気になさらずに。性別より慣れているかですから。ファミレスにいたので給食でしか見たことのないような鍋や釜持ち上げてましたから」
「そっか。上山さんファミレスにいたんだ。じゃあ悪いけど積み出しと積み下ろしお願いするね。俺が2階に運ぶから」
ヒョロヒョロガリガリの割には顔立ちだけはそこそこ端正な営業部長は台車を押して廊下に出ていった。男か女かよりも、力があるかないかなのよねと紗智は思いながら、2台目の台車にテキストがギッシリ詰まった段ボール箱を積み上げていく。あの部長はどう見ても頭脳労働や営業向きだけど、力仕事は無理そうなのになんでこんなとこにいるのだろう。疑問がさらに大きくなっていった。
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