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ピストン輸送で効率良く2階に運んでオフィスフロアを通り過ぎるとそこには異様な光景が広がっていた。デスクがいくつか並んで島のようになっていて一番奥に特注らしい豪華な机と黒の本革らしい背もたれがどっしりした椅子に腰掛けた五十代半ばの男性が煙草をふかして腕組みして、デスクの島を睨みつけている。パソコンに向かって作業している人達は何かに怯えるようにびくびくしている様子が新人の紗智にも伝わってくる。
一番奥の立派な机にいる人がここのトップってことかな、それにしてもみんな疲れ切って、目の下クマできたたり、寝癖で髪がもしゃもしゃだったり、目が充血してたりなんかどんよりしている。
紗智はフロアを通り過ぎて奥の工程表の目の前で発送するテキストに伝票を書き貼り付ける作業を教わっていた。荷物の数量に間違いがないか、送り先は正しいかチェックしながら発送準備をしていく。壁に貼られた工程表に準備済と書かれたマグネットを貼っていく。運送業者が持っていったら発送済、教室に荷物が届いたら「現着」にマグネットを切り替える。原着とは現在地到着を意味するとヒョロガリ部長…いや、柏木部長が教えてくれた。間違えないように確認しながら作業していると、一番奥の立派な革張りの椅子から立ち上がった男性が、開口一番怒鳴りつける。
「柏木、発送まだ終わらないのか!さっさとしろ!」
柏木営業部長はびくんと肩を震わせて、
「申し訳ございません。本日入社の上山さんにこの発送覚えて貰おうと思いまして」
「そんなものマニュアル読めば馬鹿でも出来るだろ?さっさと新人にやらせて営業行ってこい、馬鹿野郎!」
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