-----プロローグ-----

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-----プロローグ-----

長崎の港を出船しカナダを目指していた大型客船ダイヤモンド・プリンセス号は、まもなくその巨体を海中へと沈めようとしていた。 傾いた船体がギシギシと不気味な音を響かせて、悲鳴や怒声と混ざり合う。 救命ボートの前では、1人の船員が大声を張り上げていた。 「下がってください!!これ以上は定員オーバーです!!順番に誘導しますので1列になってお待ちください!!」 デッキの上は逃げ惑う群集で溢れている。我先にと押し寄せる人、人、人に、彼の声は届かない。 「危険ですので押さないでください!!!ボートの数は足りています!!!!指示に従って落ち着いて行動して下さい!!!!」 ダイヤモンド・プリンセス号の救命ボートは、全部で22艇。左舷側は海に浸かって使用できないが、右舷側だけでも問題ないだけのボートが積載されている。 落ち着いて避難すれば大丈夫なのだが、沈み行く船の上では、誰もが焦りの声をあげ、身を乗り出して助けを求めている。 「俺を知らないのか!!サインでもくれてやるから、さっさとそのボートに乗せろ!!!」 「えぇい、小童が!!年寄りを優先させる気はないにょか!!!」     
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