初めての校内放送

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 『三年二組、原さん。昼休み、職員室に来てください』  四限目が終わって、そう校内放送で呼び出された時、私の心臓は跳ねた。  ちょうど、お弁当を皆で食べようとしていた時だ。  周りに集まっていた友人に腕をつつかれる。 「原っち。何かしたの?」 「こうやって放送で呼び出されるとか……」 「もしかして、退学!?」  あはは、と皆が笑った。私も苦笑する。  こうやって校内放送で呼び出されるなんて、初めてのことだ。  私は記憶を辿る。  何か悪いことをしただろうか……。  授業中、ちょっと居眠りしてしまったことだろうか。  遅刻ぎりぎりで教室に飛び込んだことだろうか。  考えれば考えるほど、不安になっていく。  私はお弁当箱を開けた。 「でもさ、原っちは真面目なほうじゃん。なんかしたとは考えにくいよね」 「分かるー。ノートも綺麗に取ってるし!」 「宿題も忘れずやってくるしね」 「じゃあ、何の呼び出しだろう?」 「……分かんない」  私は玉子焼きに箸をつけた。  お母さんの作る玉子焼きは甘くて美味しいはずなのに、呼び出されたことの恐怖で味が分からなかった。  いったい何の用だろう……。  校内放送は全学年に聞かれている。  きっと、皆が私の名前を聞いていたんだろう。  クラスの違う友達、部活の後輩、そして担任の先生。  注目されることが苦手な私は、それだけでも苦痛なのに……。  本当に、いったい何の用なんだろう……。  私は無理やりお弁当の白いご飯をのみ込んだ。 「けど、さっきの放送、ひよちゃん先生じゃない?」 「マジで? いいなあ、呼び出してもらって!」 「羨ましいぞ、原っち!」  また腕をつつかれた。  私は再び苦笑する。  そうだ、あの声は日和先生だ……。
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