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「し、失礼します……」
お弁当を食べ終えた私は、職員室へ出向いた。
中ではお弁当を食べている先生、おしゃべりしている先生、次の授業の用意をしている先生……それぞれに過ごしていて、私たちと変わらないなあ、と思ってしまう。
私を呼び出したのは、現代文のひよちゃん先生こと日和先生だ。
まだ若くて、皆「イケメンだ!」と騒いでいる。私は何だか近寄りがたくて、授業で質問することは無く、どうしても分からない問題があったら、隣のクラスの担当のおじいちゃん先生に頼んで教えてもらっている。日和先生みたいな感じの人は何となく苦手だ。
私は先生の机の所まで行って、先生に声をかける。
「先生、三年二組の原です」
先生はお弁当を食べていた。
どういう仕組みなのか知らないが、先生は皆、同じお弁当を食べている。まとめて業者に注文しているのだろうか?
先生は、私を見て目を丸くした後で、ああ、と頷いた。
「悪い悪い。ちょっと待って」
「はい」
「玉子焼き食べる?」
「……結構です」
二、三分の間、先生が食べ終わるのを待った。
まだ昼休みは二十分近く残っている。
ペットボトルのお茶を飲み干して、先生は私に向き直った。
「待たせてごめん。さっきの放送だよな?」
「はい」
「俺、校内放送とかするの初めてで緊張した~。放送部の奴らは凄いな」
「私も呼び出されるのは初めてです」
「そうなんだ。あれって嫌な気持ちになるもんな」
分かっているなら呼び出さないでくれ、とも言えず私は先生の言葉を待った。
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