mizuki-side:6月30日(午前)

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 そんな僕の声に、糸乃空も駅構内へ視線を向ける。駅係員はしきりと電光掲示板を指さして、乗降客の案内対応に追われているようだ。電光掲示板を見てみると、先発列車の大幅な遅延がアナウンスされていた。 『脱線事故だってよ。カーブを曲がりきれずに列車が高層マンションに突っ込んだらしい』 「えっ?」  僕は思わず、後ろに座るスーツ姿の二人組の男たちの会話に耳を傾けた。脱線事故なんて鉄道の安全神話が確立したこの日本で、めったに発生するものじゃない。ましてや脱線した列車がそのまま高層マンションに突っ込むなんて、そんなの普通に考えたらあり得ない話だ。 『運転再開の目処は立ってないってさ。はあ、今日はもう仕事どころじゃないよね、あ、俺とりあえず職場に連絡してくるわ』  そう言って席を立ったスーツ姿の男を横目で追いながら、未だ、起きている現実を信じきれないでいた。 「事故……」  糸乃空はコクンとうなづくと、「こうするより他なかった」と小さな声で繰り返した。 「まさか……。まさか、君は僕が乗るはずだった電車が……」 「カーブを曲がりきれずに列車が脱線。沿線のマンションに激突しているはず……」  それは、つまり今から先の出来事を予知できたと言うことなのか。それとも単なる偶然か。いや、これまでの不可解な行動から察するに、彼女は明らかにこれから先に起こるべき事態をはっきりと見知っていたかのようだ。     
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