mizuki-side:7月3日(午後)

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mizuki-side:7月3日(午後)

 僕が住む東京郊外は坂道が多い。それは時に急勾配を描きながら、起伏の激しい街並みを作っていた。狭い路地に密集する住宅地、そして小高い丘の上にもマンションが立ち並ぶ。  首都圏の喧騒から離れた閑静な住宅街、そう言えば聞こえは良いかもしれないが、再開発計画が頓挫した今、昔ながらの景観が、時間と共に錆びつきながら、ただ手つかずのまま放置されているだけのベッドタウンともいえる。いまだレトロなセンスを放っているその町並みは、むしろ文化財に近いものかもしれない。  小学校裏の細い道のわきには、小さな神社があり、その手前の坂を下れば、昔と変わらないであろう商店街が広がっている。この辺りは古くから団地街が発展し、大規模な区画整理を行った地域も多い。とはいえ、昭和三十年から四十年代にかけて整備された団地は、建造から四半世紀以上が経過し、かなり老朽化が進んでいる。     
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