mizuki-side:7月4日(午後)

1/5
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ

mizuki-side:7月4日(午後)

 枕元に置いたはずの携帯端末を、手探りで引き寄せてみる。明かりを消した真っ暗な部屋で、端末モニターの青白い光がぼうっと浮かび上がり、僕は硬いベッドの上で寝返りをうつ。 「まさか、このご時世、端末の電波が届かないところに住んでるとか、あり得ないでしょ……」   ソーシャルメディアのメッセンジャーアプリケーションを立ち上げ、宛先を糸乃空(いとのそら)のアカウントに設定すると、文章作成画面に眼を凝らした。いざメッセージを送信しようとすると、頭の中で現れては消えていく伝えたい情景を、程よく言葉にしていくのが難しい。なんとなく文章を書いて、あらためて読み返してみれば、その文体に妙な馴れ馴れしさを感じてしまい、あわてて削除する。宛先のあるメッセージを考えるのは、こんなにも難しいことだったんだと改めて思う。  暗い部屋でベッドに横になりながら、そんなことを繰り返していると、どうにも耐え切れない眠気に襲われ、気づけばそのまま眠ってしまった。     
/125ページ

最初のコメントを投稿しよう!