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 葬儀の仕事は、最短で2日です。  通夜・葬儀・告別式……。本当にあっという間です。  たった2日間。その短い時間の中に、葬儀に向けての決めごとがたくさんあります。  人間が亡くなるのは一生に1度だけ。だから葬儀も1回限りです。  その一瞬を、事務的な手続きや決めごとに追われる喪主様方をフォローして、足を運んでくださる親戚・会社関係・町内の皆様・友人関係……皆様に失礼のないように対応をしなければなりません。  願うことなら、自分の担当する式を通して、少しでも遺族の皆様の悲しみに寄り添えたなら。究極的に言えば、その心を救えたのなら。  葬儀担当者としてそう思うのですが、理想と現実はやはりかけ離れていて。私はとても悩みました。  大学卒業をして、新入社員の若者が「2日間あなたのお手伝いをさせていただきます。よろしくおねがいします」と挨拶に来るのです。  喪主様は当然不安になります。「こんな若者に我が家の大切な式を任せて大丈夫だろうか」そう思うに違いありません。  ましてや初対面です。知り合いですらありません。限られた短い時間の中で、大切な人を亡くした方々のために何ができるのか。それは私にとって大きなテーマでした。  良かれと思って行った些細な行動で、喪主様を傷つけてしまったことがあります。  何もできなかったと肩を落とした式で、喪主様に「ありがとうございます」と手を握られたことがあります。  人が亡くなくなるという非日常におかれた、繊細な心。  何が正しくて、何が間違っているのか。未だに分かりません。  だから、私の書いたこの本も、読んで不快に思う方もいるでしょう。「人が亡くなるってこういうことじゃないんだぞ!」そう感じる方がいるに違いありません。  それでも、手に取ってくださった方の誰かの心が救われることを願って。誰かの心に届くことを願って。執筆をさせていただきました。  このような貴重な機会をくださったDEF STUDIOS株式会社様。  そして、何より、こんな私とやり取りをしてくださる、優しい皆様方。  本当に、本当に、ありがとうございます。  続きます。
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