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「ほんと、好きだよねぇ」
傘を広げながら、呆れた顔で聖羅が睨む。
「何が? 別にそんなんじゃねーよ」
仏頂面で一歩踏み出すと、あっという間にズボンの裾から濡れてくる。
「じゃあ、何でいつも音楽室にいるの?」
「部室、隣だからだよ。それに、いつもじゃねーし。合唱部の練習が無い日に、たまに寄るだけだよ」
「ふぅん。ま、いいけど」
「なんだよ。それ」
制服のズボンは既に膝までびしょびしょだったが、俺は構わずスピードを上げた。
「ちょっと待ってよー」聖羅が派手な水飛沫を上げながら、俺の背中を追いかけて来た。
聖羅と俺の家は隣同士。要は幼馴染だ。物心ついた頃から、聖羅は俺の後ばかりついて来ていた。
高校くらいは離れたくて、わざと聖羅には無理めの高校ばかりを選んだのに、コイツは死ぬ程勉強して、俺と同じ高校を受験した。そして、まさかの合格だ。
しかも、部活まで俺の真似してテニス部に入部した。
「帰りが一緒だと心強いわ」
どうやら、隣のおばさんの策略らしい。
おまけに、何の因果かクラスまで一緒ときた。絶対何かの陰謀だ。
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