音楽室

3/5
前へ
/13ページ
次へ
「ほんと、好きだよねぇ」 傘を広げながら、呆れた顔で聖羅が睨む。 「何が? 別にそんなんじゃねーよ」 仏頂面で一歩踏み出すと、あっという間にズボンの裾から濡れてくる。 「じゃあ、何でいつも音楽室にいるの?」 「部室、隣だからだよ。それに、いつもじゃねーし。合唱部の練習が無い日に、たまに寄るだけだよ」 「ふぅん。ま、いいけど」 「なんだよ。それ」 制服のズボンは既に膝までびしょびしょだったが、俺は構わずスピードを上げた。 「ちょっと待ってよー」聖羅が派手な水飛沫を上げながら、俺の背中を追いかけて来た。 聖羅と俺の家は隣同士。要は幼馴染だ。物心ついた頃から、聖羅は俺の後ばかりついて来ていた。 高校くらいは離れたくて、わざと聖羅には無理めの高校ばかりを選んだのに、コイツは死ぬ程勉強して、俺と同じ高校を受験した。そして、まさかの合格だ。 しかも、部活まで俺の真似してテニス部に入部した。 「帰りが一緒だと心強いわ」 どうやら、隣のおばさんの策略らしい。 おまけに、何の因果かクラスまで一緒ときた。絶対何かの陰謀だ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加