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夕焼け
放課後、もう誰も残っていない教室に1人。
外の夕焼けをぼんやりと眺めながら、私は学級日誌を書き込んでいた。
気持ちいい風が入るからとさっき開けた窓からは、部活に打ち込む生徒達の声が小さく聞こえてくる。
私もなにか部活をやっていたらーーーふとそんな考えが頭をよぎったが、そもそも続かないか幽霊部員止まりだと思考をやめた。
最後の1文を書き終えて、ふぅ、と息をついたと同時に教室の扉が開く。
「…あれ、」
低音の小さな声のした方へ向くと、そこには我がクラス1のヤンキー、芳崎 棗が立っていた。
クラス1のヤンキーといっても、髪色が明るく遅刻しがちであるということ以外は、喧嘩をしているわけでもなく特に害のない人だ。
「なにやってんの?」
訝しげに私の顔を見た芳崎くんは、私の手元に目線を落とすと、とても驚いた表情で再び私の顔を見る。
「それっ、学級日誌…!」
芳崎くんがそう言ったところで、はたと思い出す。
そういえば、今日の当番は芳崎くんだった。
「ごめん、勝手に書いちゃった」
書き終えた学級日誌を見せると、芳崎くんは眉尻を下げてこちらに歩み寄る。
「あー、もう、ほんと悪ぃ。すっかり忘れてた」
「大丈夫だよ、私が勝手にやったんだし」
「いや…。今度代わるわ…、」
そう言って、芳崎くんは私の前の席に座る。
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