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 地球がその歴史を、終えようとしていた。  太陽の働きの異常が気づかれたのは、もう300年以上も前だった。  太陽の温度が年々高くなっている現象が観測され、最初の内、それは太陽の活動周期に即したものだと思われていた。しかし、その後も温度上昇は加速する一方だったので、徐々に周期的な活動とは別の要因があるのではと疑われるようになっていった。  それでも、大多数の科学者たちは、温度上昇はいつかは収まるものと信じていた。太陽の寿命はあと60億年以上ある筈だったからだ。  だが、人々の期待を裏切り、太陽は温度を下げる様子を一向に見せず、太陽の異常な活動の影響を受けて、地球の地表温度も上がっていった。人々は地上を捨て、比較的環境が安定している地下に生活の場を移し、徐々に巨大な地下都市を形成していった。  そして、今から150年前だった。全世界に、太陽の終焉が近づいている――すなわち、地球の終わりが迫っていると大々的に発表されたのは。  そのニュースは、一時、世界を大混乱に突き落とした。株価の暴落、治安の悪化、新興宗教の乱立。しかし、それらは短期間のうちに自然と収まり、その後も人々は粛々と生活を続けた。  それまで軍事関連をはじめ、多方面向けられていた投資は、宇宙開発に集中的に注がれるようになった。潤沢な資金を得た研究と技術開発によって光速以上の速さでの移動が可能になって以降、太陽系内の惑星への航行や、太陽系外の探査は急速に発展し、人々に生き残りへの希望をもたらした。
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