泡包みの人形姫と魚臭い王子

3/9
前へ
/9ページ
次へ
―魚臭い王子― ある小国に、海いろのマントが良く似合う若い王子がいた。 王子は、無類の魚好きで、魚以外のモノには全く興味が無かった。 王子も国王になる日が近付いてくると、思春期のせいか、誰かに恋され、愛されたくなった。 王子は、国王と王妃に、王位継承までには妃となる娘を迎える事を約束すると、自室に戻り、いつものように扉に鍵をかけた。 王と王妃はこれに安堵の表情を浮かべていた。 そして互いに寄り添うと、やはり自分たちの息子は普通の男だった、と微笑んだ。 だが、実際は違っていた。 国王も王妃も「本当の息子」を知らなかった。 王子は単なる魚好きではない。 魚に特別な感情を抱いていた。 だから、この王子の恋の相手が「陸」に存在するはずがなかった。 王子はどこまでも変わっていた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加