泡包みの人形姫と魚臭い王子

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―魚好き― 王子は、巨大な真珠貝のベッドに横たわると、いつものように魚の図鑑を開いて、不気味な笑みを浮かべた。 どのページにも魚の生態などが詳しく書かれ、王子の好む内容ばかりだった。 その中でも王子が特に好んだページは、魚たちの「交尾」を記したページで、王子はそれを少し興奮気味に読み上げた。 王子にとってのそれは、官能小説と同じで、興奮を高める源だった。 王子はベッドで悶えながら言った。 「この魚臭さが堪らない」 「その鱗を剥がしたい」 「あの深海に抱かれたい」と。 王子は、その文章と挿し絵に強烈な刺激を受けると、激しい呼吸の中、図鑑に顔を埋めて、やがて果てた。 王子は、汚れた身体を塩水に浸した布で拭くと、再び図鑑を開いた。 この時、王子はふと思った。 やはり、妃に迎える娘は魚でなくてはならない、と。 だが、人間と魚の結婚など、誰が許してくれるだろうか…。 これでは人間からも魚からも変人扱いである。 王子は、あらゆる事に苦悩した。
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