池松と南沢

100/102
3864人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
*********** 会社近くの公園でブランコに乗りながら、半分に欠けた月を見上げた。 (……俺は池松が好きなんだ) 自覚するとやっぱり涙が滲んだ。 分かってる。 これは許されない気持ちだ。 今の社会は性的(LGBT)マイノリティにも理解が広がっていて。暖かい目で見守ってくれる人もいるだろうけど。 実際、会社の隣の席のヤツがそうで。一方的に好意を持たれてるなんて知ったら、大概のことには寛容な池松だって、眉をひそめるに違いない。 (失恋かあ) 気づいた途端に終わりだなんて。報われなすぎるにも程がある。 (痛いなあ) ズキズキと痛む胸は苦しくて、吐き出す息も重くて悲しい。 今までだって、失恋はたくさんしてきた。 恋になる前に片想いで終わったことも何度もある。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!