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会社近くの公園でブランコに乗りながら、半分に欠けた月を見上げた。
(……俺は池松が好きなんだ)
自覚するとやっぱり涙が滲んだ。
分かってる。
これは許されない気持ちだ。
今の社会は性的マイノリティにも理解が広がっていて。暖かい目で見守ってくれる人もいるだろうけど。
実際、会社の隣の席のヤツがそうで。一方的に好意を持たれてるなんて知ったら、大概のことには寛容な池松だって、眉をひそめるに違いない。
(失恋かあ)
気づいた途端に終わりだなんて。報われなすぎるにも程がある。
(痛いなあ)
ズキズキと痛む胸は苦しくて、吐き出す息も重くて悲しい。
今までだって、失恋はたくさんしてきた。
恋になる前に片想いで終わったことも何度もある。
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