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「では仕事の内容を説明する」
ゴクリと唾を飲み込む斎藤。
「この話は長官、次長、総務部長、そして我々3人だけで共有する情報だ。それ以外は一切の口外を禁止する」
「ハイ」
冷たいお茶で喉を潤す青木室長。冷房が弱めだから暑くて喉が渇くのだろうと斎藤は思った。
「諸外国の情報局では一部実際に行われていることであり、我が国も試験的実施を準備していたある計画の話だ」
「・・・・・・」
二人は黙って次の言葉を待つ。
「1950年代からアメリカCIAが行っていた〝MKウルトラ計画〟を知っていると思う。あれは人道的見地から批判を浴びて頓挫した人体に対する洗脳実験だった。分かりやすく言うと本人の意思とは関係なく、ある合図でロボットのように作動する人間兵器をつくる計画だった」
そこまで話すと、
「えぇ?」
と柿崎は小声を上げた。
「知らないのか、柿崎君は」
「ハイ。すみません」
「インターネットで全てが分かる。後で勉強しておいてくれ」
「ハイ」
青木室長は再びお茶を飲むと話し出す。
「つまり、いよいよ日本もそれを行うということだ」
「ええっ? 何の意味があってそんなことを・・・」
驚いて斎藤は思わず口に出てしまう。
「それは我々が感知する問題では無い。国の方針だ。そこをわきまえる様に頼むよ。我々の行動は国の意思であることを忘れないように」
と説く青木室長の目は真直ぐに斎藤を見ていた。その威圧感に斎藤は、
「は、はいっ」
と答えるしか無かった。
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