第2話  引越し

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 その後二人は引越し祝いに近くの食堂で一杯やっていた。 「引越しって言えば蕎麦だろ~?」  ざるそば大盛りをすする斎藤が柿崎を見る。 「僕、蕎麦アレルギーなんですよ」 「はぁ? だからカツ丼?」  柿崎はカツ丼を食べていた。 「何か、縁起ものじゃないですか、カツ丼って」 「そうだけど、何のゲン担ぎだよ」  眉を寄せて柿崎を見る斎藤。 「まぁ何と言うか、この仕事に〝勝つ!〟みたいな。ハハ」 「何だそりゃ。まぁ気持ちは分からなくも無いけどな」 「ですよね、よかったぁ」  上司である斎藤に柿崎は気を遣いっぱなしだ。 「お前、俺にそんなに気を遣うなよ」 「へ?」  やはり斎藤はそれが気になっていたようだ。 「お前はこの仕事では俺の相棒役だ。この先どんな状況になるか分からない任務だけど、下らねぇ事に気は遣うなよ。それより気を配るのは仕事の精度だ。例えばエアコンな」 「ハァ・・・」  困る柿崎。 「それは冗談だよ。エアコンなんてちょっと我慢したら済む話だ。実際怖いのは僅かな段取りミスで全てが狂っちまう事だ」 「・・・・・・」  柿崎は真剣に耳を傾ける。 「そこはお互い抜かりなく緻密に行こうぜ」  手を差し出す斎藤。 「?」と恐る恐る手を差し出す柿崎。斎藤はその手をガシッと掴んで強引に握手をする。ニコリとして言った。 「ヨロシクな」 「はっ、はい、よろしくお願いします!」 「何かツマミ頼めよ。今日は事務所開きなんだからよ」  柿崎のグラスにビールを注ぐ斎藤。 「あ、スンマセン」  両手でそれを受ける。
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