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「例えば、催眠術に掛けて〝あなたはこの音を聞くと犬になります〟ってある音を設定すると、その音を聞く度に四つんばになって本気で〝ワンワン〟なんて吠えるんですよ」
「ふーん。で?」
「それは催眠術師が催眠を解かない限り何日も続けられるんです。別の日に合図の音を聞くと同じように犬になってしまう」
「それはテレビだから芝居なんじゃねぇの?」
「そうは思えないですね。僕はこれを犯罪に使えるじゃないかと直ぐに思いました。〝この音を聞いたらあいつを殺したくなる〟なんていう催眠を掛けたらホントに殺るんじゃないかと」
柿崎は真剣に斎藤に説明する。
「まぁ理屈はそうだよな。それが可能なら、かなり経済的だ」
「ですよねぇ」
「だけど国の方針はそれを科学的に確実に行うってことなんだろう。催眠術っていう曖昧な方法は通らないだろうな。それにそれを請け負う催眠術師が秘密を厳守するとは限らない」
「そうですかね? 金で動かせそうな気がしますよ」
「お前、現実的だな」
「何だかんだ理想論を言っても世の中〝金〟ですから」
「そうかなぁ・・・」
「そうですよ。僕はこの部署に来る前には情報管理室にいたんですけど、色々と知りたくもない事を知らされましたよ」
「例えば、何だ」
箸を持つ手が止まる斎藤。
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