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「それは斎藤さんにも言えませんが、いわゆる政治家の買収工作の資料とか、銀行や企業の乗っ取り工作やら、まぁ詳しくは言えませんが色々です」
ゴクリとビールを飲む柿崎。
「お前、そんなの担当していたのか?」
柿崎にビールを注ぐ。
「担当というか、あそこの部署は公調の仕事の書庫みたいなもんですから。それを通して悟った事は〝金と女〟です。この究極の二つのグッズがあれば一国を動かす事が出来るって事です。その女だって金次第でどうにでも動かせる。だから僕は女なんて信用しないし、結婚なんて制度そのものが成立しないものだと分かっているつもりです」
酔いが回ったからなのだろうか、柿崎は本音を語り始めた。
「それはお前の持論だろ?」
柿崎が向けたビール瓶にグラスを差し出す斎藤。
「周りを見ていればそうは思えませんよ。特に我々のようなキャリア職には金の臭いに寄って来る女ばかりじゃないですか」
輝美を思い浮かべる。輝美がそうだとは思えない。
「じゃあキャリア職と結婚したら同等じゃないか」
斎藤が返すと、
「そんなのと結婚生活が成立します? いつも居ない。全てセルフ。何の意味があって結婚するんですか? 下手したら子供を見ているのは自分だけみたいになっちゃう。〝私は忙しいからあんたがやって〟がオチですよ」
「・・・そうかもな」
斎藤は家庭に男が二人になるのは事実だと思った。
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