第3話  面会

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第3話  面会

 忍野村(おしのむら)。山梨県南東部および南都留郡北部の富士山麓に位置し、名水として知られる忍野八海を有する。8つの泉は北斗七星と北極星に見立てられ、江戸時代には八海巡りの地として、富士講信者たちに親しまれた。世界遺産富士山の構成資産として認定されている。忍野村から見る富士山は「忍野富士」と呼ばれ、のどかな村の民家から覗かせる雄大な富士の景色はまた独特な趣として愛されている。  富士山の裾野に広がる原野である梨ヶ原は戦後に米軍管理となった。これは1959年(昭和34年)以降、自衛隊の北富士演習場として利用されていて、入会権(いりあいけん)をめぐる問題があり、村落共同団体などからの抗議運動に発展している。  ここに位置する陸上自衛隊 北富士駐屯地。この官舎の一角に斎藤と柿崎が訪れていた。  6畳ほどの殺風景な部屋。何の部屋なのか分からないほど何も無い。そこに会議テーブル一つとイスが3脚。だるまストーブが一つ点火されていた。もう一脚に座る人物を待つ間、二人は外の雪景色に目を奪われていた。 「いいところですね」 「今日は晴れているからだよ。やっぱり雪国の生活は、俺は嫌だな」 「まぁそうですけど」 「さっきだってお前事故るとこだったじゃねぇか」 「あれヤバかったですね。スンマセン」  二人は車でここまで来た。チェーンを用意していたのだが、ギリギリまで装着しなかったら案の定スリップして電柱にぶつかるところだった。
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