プロローグ

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「MKウルトラ計画」の現場は、1949年にアレン・ダレスがこのプロジェクトを立ち上げるきっかけになった報告書「向精神性化学物質戦:戦争の新概念」を書いたL・ウィルソン・グリーン博士と、カナダとアメリカで神経学と精神医学を学んだドナルド・ユーイン・キャメロン博士が仕切った。とりわけキャメロン博士は世界精神医学会の共同創始者であり、世界的精神科医として知られていた名医だ。    1953年にキャメロン博士は「サイキック・ドライビング(精神操縦)」という論文を発表したが、その内容に注目したCIAが彼に資金提供を申し出た。こうしてキャメロン博士は、カナダ・モントリオールにあるマッギル大学付属アラン記念病院で「サイキック・ドライビング」の臨床実験を開始した。だがやがて博士の実験は精神操縦のみならず、人格や記憶そのものまで根底から変えてしまう悪魔の人体実験へと変貌していくのである。  キャメロン博士が行ったのは名目的には薬物投与と電極ショック療法を組み合わせた、新しい精神治療法の開発だった。だがその内容は治療というにはあまりにもすさまじく、非人道的なものだった。
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