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第4話 被験者確保
山梨県、富士急行河口湖線の駅である河口湖駅。
周囲を見渡しゆっくりと歩を進める男がいた。スラッとした背丈のある40代ほどの男。時刻は夕方の5時半を過ぎている。バス乗場を目指し、看板に書いてある時刻表をじっと見ている。
すると男は近くのベンチに腰を掛け、一点を見つめてボーとしている。荷物らしい荷物は無く、旅行に来た感じでもない。一つだけ小物用のショルダーバッグを提げているだけだった。
しばらくするとバスが来た。この時間に乗る乗客は少ない。男は6時8分発と言うバスに乗り込む。他に乗客は2名の老夫婦が乗っただけだ。
山道を進むバスの中、後部の方に座る男は視点が定まることなく窓ガラスに目を向けていた。外を見ているのかも知れない。しかしそれは見ているのではなく、ただ視界に景色が入って来ているだけなのだろう。
運転手はしきりにバックミラー越しにその男を見ていた。
(きっとあの人は富岳風穴で降りるんだろうな・・・)
地元の人間はそれが分かると言う。
〝それ〟とは自殺志願者のことである。
そして20数分後、バスは富岳風穴で停車した。
やはり男はここで下車したのだった。
辺りは陽が落ちて来始めていた。4月末となったこの時期でもまだ夕暮れ時は肌寒い。男は辺りに目をやると遊歩道を見つけ、そちらへ歩き出した。
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