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「そろそろだ。奴は薬を飲んでしまうぞ」
20mほど離れた場所から暗視スコープで男を覗いている杉山が言った。北富士駐屯地で斎藤らが会った自衛隊の男だ。
傍らにいたもう一人の男が無線で「照明用意」と告げると、
『A班準備完了』
『B班準備完了』
『C班準備完了』
と応答が入った。それを聞いた杉山の、
「作戦開始、3、2、1・・・始め」
の合図と同時に〝ブーンッ〟と発電機の音がすると一斉に男を中心に三方向から三脚に設置した水銀灯の明かりが点いた。
ビクッとして飛び上がる男。
「何だ?! 何だ、これは!」
と叫ぶと男はキョロキョロと素早く周囲を見渡し体制を低くした。眩しさに目を細めて光の方向に手をかざした男の指の隙間から黒い影が迫って来る。
「あぁっ!」
と叫んだ時には五人の男に取り囲まれ羽交い絞めにされていた。
「何だ、お前たちは! 何者だっ!」
もがく男の首に太いマジックのような筒状の物を一人の男が刺した。
「何するんだ! やめろっ! 誰かーっ、誰かいるか~っ!!」
と、ありったけの声を出す男だが、周囲に誰がいるはずもない。いたところで誰が助けるだろうか。
次第に男の力が抜けていきグッタリとなった。
「被験者確保」
と杉山が無線に告げると、
『了解。こちらは異常無し。搬送をお願いします』
と声が入った。斎藤の声だった。
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